DNAが傷ついたときに起こる新しい免疫応答の仕組みを解明 ~これまで謎に包まれていたDNA損傷後のHLA Class I提示機構が明らかに~
群馬大学未来先端研究機構、内分泌代謝?シグナル学研究部門の柴田淳史准教授(責任著者)と内原脩貴博士研究員(筆頭著者)、九州大学大学院医学研究院応用幹細胞医科学部門?堅田明子助教、九州大学アイソトープ統合安全管理センター?山内基弘准教授を中心とした国際共同研究チームが、DNAが傷ついたときに起こる新しい免疫応答の仕組みを明らかにし、その研究成果がMolecular Cell誌(Cell姉妹紙)に掲載されました。抗原提示を行うことで免疫を活性化する役割を持つHLA Class I1が、DNA損傷に応答することは知られていましたが、どのような仕組みでHLA Class Iが細胞表面に提示されるかはこれまで不明でした。今回の研究では、最新の分子生物学的技術を駆使することで、その仕組みを一つ一つ紐解き、DNA損傷後のHLA Class I提示機構の謎を世界に先駆けて明らかにしました。DNA損傷は生体内の様々な場面で生じることから、今回の研究により、HLA Class Iが関わる、がん?慢性炎症?自己免疫疾患?アレルギー疾患などの病気の予防法や治療法の開発につながることが期待されます。
研究成果のポイント
どのような成果か
DNA損傷が発生した際のHLA Class I提示の分子メカニズムを解明
背景と研究の歩み
DNA損傷がHLA Class Iの提示を引き起こすことは約20年前から知られていたが、その仕組みは全く分かっていなかった。研究グループが専門とする最新の分子生物学的解析法や次世代シーケンスを駆使したバイオインフォマティクス解析によりその仕組みがついに明らかになった。
社会への還元として期待できる内容、今後の展望
がん治療法の開発や改善に期待。また慢性炎症?自己免疫疾患?アレルギー疾患の予防法や治療法の開発にも波及効果が期待される。
掲載情報
本研究成果は、2022年5月19日付の「Molecular Cell」の電子版に掲載されます。
- タイトル:DNA Damage Promotes HLA Class I Presentation by Stimulating a Pioneer Round of Translation Associated Antigen Production
- 筆者:Yuki Uchihara, Tiara Bunga Mayang Permata, Hiro Sato, Reika Kawabata-Iwakawa, Sayako Katada, Wenchao Gu, Sangeeta Kakoti, Motohiro Yamauchi, Reona Kato, Soehartati Gondhowiardjo, Naoki Hosen, Takaaki Yasuhara, and Atsushi Shibata* *責任著者
- 雑誌名:Molecular Cell
なお、本研究は、科学研究費助成事業(JP17H04713, JP20H04879, JP20K21536, JP21H05504, JP21H03596)、公益財団法人 武田科学振興財団、公益財団法人 住友財団、公益財団法人 サントリー生命科学財団、公益財団法人 小林がん学術振興会、公益財団法人 がん研究振興財団、公益財団法人 群馬健康医学振興会、公益財団法人 上原記念生命科学財団、公益財団法人 アステラス病態代謝研究会、公益財団法人 かなえ医薬振興財団、公益財団法人 安田記念医学財団、公益財団法人 中島記念国際交流財団、群馬大学重点支援プロジェクトG3、放射線災害?医科学研究拠点 共同利用?共同研究、がん研究開発(2021-A-8)の助成を受け、行われました。
*米国東部夏時間5月19日午前11時(日本時間で5月20日午前0時)以前の公表は禁じられています。
用語説明
HLA Class I:全ての有核細胞の表面に発現し、自己抗原、細菌、ウィルスなどの抗原ペプチドをT細胞に提示して免疫を活性化する働きがあります。
本件に関するお問合せ先
(◎を半角アットマークに変更してください。)
研究に関すること
群馬大学未来先端研究機構 DNA修復研究室
准教授 柴田淳史
HP: https://shibataxlab.com/
TEL:027-220-7977
E-MAIL:shibata.at◎gunma-u.ac.jp
九州大学大学院医学研究院応用幹細胞医科学部門
堅田明子 助教
HP:https://www.lab.med.kyushu-u.ac.jp/scb/katada/
九州大学アイソトープ統合安全管理センター
山内基弘 准教授
Email:yamauchi.motohiro.619◎m.kyushu-u.ac.jp
報道に関すること
群馬大学総務課広報係
TEL:027-220-7010
FAX:027-220-7012
E-mail:s-public◎ml.gunma-u.ac.jp (係共通)
プレスリリース
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