大学院理工学府 第70回 応用物理学会 春季学術講演会において、電子情報?数理領域研究生(当時 博士前期課程2年) 松本 卓己さんが放射線分科会学生優秀講演賞(奨励賞)を受賞しました
2023年3月15日(水)? 3月18日(土)に 上智大学 四谷キャンパスにてハイブリッド開催された第70回 応用物理学会 春季学術講演会)において、現 電子情報?数理領域研究生(花泉研)(発表当時 博士前期課程2年)の松本 卓己さんが、「薄膜型SiC検出器による重粒子線がん治療場の線エネルギー付与測定」と題した口頭発表を行い、その内容が高く評価され、放射線分科会学生優秀講演賞(奨励賞)を受賞しました。
松本 卓己さんは、重粒子線を用いたがん治療の高度化を目指す医理工学連携研究に取り組んでいます。その研究課題の中で、特に、臨床線量と呼ばれる治療効果を表す指標に注目しました。既存の放射線センサは物理的な放射線を測定するのみで、生物への影響を考慮しておらず、人体を治療するために必要な線量(臨床線量)を評価できていませんでした。この点を解決するために、今回の研究で松本さんは、同プログラム博士前期課程修了生である 山口皐平さんらと協力しつつ、ワイドバンドギャップ半導体を利用した臨床線量計デバイスの実現を目指し、半導体検出器を開発しました。特にシリコンカーバイド(SiC)と呼ばれる半導体を用いた検出器を、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST)と連携して薄いセンサとして開発することで、治療用の炭素線を正確に評価できるデバイスを実現させました。開発されたデバイスについて、群馬大学重粒子医学研究センターや、量子科学技術研究機構の実際の炭素線治療場において評価することで、実用に耐えうる線量計としての動作を確認することができました。
受賞後も研究は進展しており、現在、松本 卓己さんは、群馬大学理工学部と群馬大学医学部附属病院 重粒子線医学研究センター、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(QST)、ならびに東北大学工学研究科との共同研究によりさらなる進化を目指しています。より人体に近い応答を持つダイヤモンドを用いた半導体型の放射線センサの開発や、より多様なイオン種を用いた評価を実施しています。今後、臨床線量の計測が実現されれば、より小さな病症への粒子線治療の対応や、より高度な照射技術による治療効果改善を支える計測技術の実現が期待されます。
なお本研究は群馬大学医学部附属病院 重粒子線医学研究センターの共同利用の一環として行われております。また、本研究の一部は、中谷医工計測財団 技術開発研究助成(奨励研究)の助成を受けて実施されました。